吹奏楽部で打楽器パートの担当になった話

吹奏楽部。

読んで字の如く、吹奏楽をする部活動である。

一応、文化系の部活動に分類されるが、その実態は運動部と呼ぶ方がより近いのでは無いかとも巷では囁かれている様だが、勿論のんびりと過酷なコンクールの賞レースに参加することなく等身大で音楽を楽しんでいる吹奏楽部もこの世にはある為に、まぁそんなものは学校に寄ると言う他ない。

さて、次に「吹奏楽」とは何かという話を軽くする。

経験者で無ければ正確には知らないという人も意外と多いのでは無いだろうか。

吹奏楽とは、木管楽器と金管楽器────即ち吹奏楽器と打楽器を主体とした演奏形態の事を指す。

バイオリンを初めとした弦楽器を主体に『弦・管・打』の楽器を揃えた西洋で発展してきた演奏形態は、オーケストラと呼ばれ区別される。

因みに吹奏楽のことを『ブラバン』────即ちブラスバンドと呼ぶことがあるが、これは厳密に言うと間違いである。

ブラスバンドとは金管楽器と打楽器メインの演奏形態であり、吹奏楽を正式に英訳すると「ウィンドオーケストラ」とか「ウインドバンド」とかになる。

その他細かい違いや、一概に区別しきれない要素も有ったりするのだが一旦割愛。

何はともあれ、自分はこの吹奏楽という音楽ジャンルを中学生の時から通算17年(2026時点)も続けている。

担当パートは中学生の時から一途にパーカッション(打楽器)だ。純愛である。

これを話すと、「なんで吹奏楽なのに打楽器?」「吹かないの?」と言われたりするのだが、なぜ自分が吹奏楽で打楽器を選んだのかを話すと割かし長い話になるのだ。

不人気パート・打楽器

Q.吹奏楽部に入ったばかりの時、初め何の楽器を希望してた?

吹奏楽経験者の中では、よくある定番のトークテーマである。

未経験者から人気の楽器は大体「サックス」「トランペット」「フルート」「クラリネット」辺り。矢張り有名どころやメロディの多いパートは、どの時代でも人気が出るものだ。次点では「トロンボーン」や「ホルン」が中堅どころの人気を保っているという認識が個人的にある。

(『響け!ユーフォニアム』が流行した後は、やっぱりユーフォニアムの志望者も増えたのだろうか?)

一方、パーカッションパートを初めから志望して入部してくる初心者はほぼ居ない。ごく稀に小学校で和太鼓をやっていたとか、ドラムを叩きたいとかで希望してくれる初心者も居る。

さもありなん。

大体の入部希望者は楽器を吹きたくて入部してくれるのである。何せ吹奏楽部なのだから。

皆、楽器を叩く為に入部してきた訳ではないのだ。

何故だ、小学校の音楽発表会の合奏では木琴や鉄琴はあんなに人気だったのに。余談だが、自分は小学生時代ジャンケンに負け続けていた為、小学校在籍中に木琴や鉄琴の担当になった事が無い。それが今や、当時の同級生の中では誰よりも鍵盤打楽器に触れ、卓越した技術を保持していると言う確信が有る。

閑話休題。

つまり、パーカッションは数ある吹奏楽で使われる楽器の中でも有数の知名度を誇りながら圧倒的に不人気のパートである訳だ。

あまつさえ、「打楽器なんて叩けば音が出るから簡単でしょ?」とか吹奏楽関係内外から言われる訳だ。

実際、誰にでも音が出せるという意味では、未経験者にとってハードルは低い楽器だ。ならば、皆パーカッションを初めてみれば良いではないか。

何故か。

再三言うが、大体の入部希望者は『楽器を吹く為に吹奏楽部に入ったから。』だ。

悲しい。

自分は、吹奏楽で一番カッコイイ楽器はパーカッションであると思いながら未だにステージ上で撥を握っている。

以下、この稿を呼んだ吹奏楽部初心者が、願わくばパーカッションを心からカッコイイと信じ、パーカッションを熱く志望してくれる事を願って自身の経験を綴って行こうと思う。

打楽器担当になったワケ

初めて自分が、吹奏楽という音楽ジャンルに本格的に対面したのは小学6年生の時だった。

自分は幼い頃からピアノやエレクトーンを習っていた経験があった事、進学予定の地域の公立中学校に、田舎の公立校にしては『吹奏楽コンクール』を始めとした賞レースに比較的強い吹奏楽部があった事から、中学生になったら是が非でも吹奏楽部に入部したいと考えていた。

しかし、幾らピアノを少しばかりかじったことが有ると言えど、管楽器や打楽器の知識は当時の私にはまだ無い。その時はまだ、別の中学に進学する予定だった同じく吹奏楽部志望の友人と「吹奏楽部入りたいねー。」と漠然と話しているだけに過ぎず、何の楽器を吹きたいとかは考えていなかった。

そんな時。自分たちの小学校に、中学校の吹奏楽部が出張演奏会に来てくれる機会が訪れた。

小学生も知っていてノレる選曲。

今にして思えば、未来の後輩の勧誘も兼ねていたのであろう楽器紹介コーナー。

音楽に関心の無いクソガキすらも次第に虜にさせていくその手腕に、元々入部希望者である自分は為す術もなく聞き惚れた。

その際に、一番自分の心を掴んだ楽器が体育館中を音圧で支配していたパーカッションだったのだ。

「凄い!打楽器カッコイイ!」

皆も……否。

皆では無くても同じように考えている人は多少はいるに違いない。だって本当にカッコイイんだもの。

そう確信して友人たちとの感想合戦に臨んだ私は衝撃を受けた。

誰も。

打楽器の。

話をしてねぇ。

あぁ、一般的には打楽器をカッコイイとは人は思わないんだ。自分と世間の感性の乖離に驚く。

思えば、自分の良いと思ったものが、あまり共感されて来なかった人生であった。

エレクトーンの発表会で、とっとこハム太郎の曲をするから、好きなキャラクターの耳カチューシャを装身することになった時は、自分一人だけトラハムちゃんで、後の女子は皆りぼんちゃんかマフラーちゃんだったし。

幼稚園の工作で、「他の子と被らない様に何の動物をモチーフにするか決めよう。被ったらジャンケンしよう。」と先生に言われた時は自信満々に「カニ!」と答えた為に誰とも争うことなくカニをモチーフとして使用する権利を手に入れた。

……ショックであった。

一般的な吹奏楽部志望者は、概ね管楽器に憧れを抱くらしい。

現実に気付いた当時まだ若かった自分(齢12)は、健気にも世相に寄り添おうとした。

改めて管楽器を志望しようとしたのである。

選んだ楽器はクラリネットであった。

そして遂に入部の時……!

時は流れ、無事中学校に入学した自分。

初めのミーティングというか、入部希望者全員と諸先輩方全員、そして顧問の先生が一堂に会する初めてのタイミング。

当然ここでは、自己紹介が行われる。

我々新入生は名前とクラス、出身小学校と志望楽器を発表するよう先生から言い渡された。

この時の私は、何だかんだで既にクラリネットに対してそれなりの愛着を感じていた。思い込みである。

何故クラリネットなのか。

黒の本体に銀のパーツがカッコイイなと思っていたからである。

所謂ビジュ推しだった。

(余談だが、現在の管楽器ビジュの最推しがバスクラリネットで、音色の最推しがユーフォニアムである。音色は小学校の時からユーフォニアムが最推しだった。なら大人しくユーフォニアムを希望しろや。)

志望楽器はクラリネットだと、高らかに宣言するつもりでただ自分の番を待った。新入生に同じ小学校出身者はおらず、その場には知らない人しか居ない。緊張はその日のピークに達した。

新入生は10人と少ししかおらず、自分の番はすぐにやって来た。心の中でクラリネットこそが自分の志望楽器だと唱える。

ドキドキしながら口を開く。

しかし、その時2つの誤算があった。

①まだしっかりと楽器の名前を覚えていなかったこと。

②打楽器への未練を捨てきれていなかったこと。

口は自分のシュミレーションとは違う台詞を放った。

「希望の楽器は、オーボエか打楽器です!」

完全にヤバいやつである。

吹奏楽という文化に頭まで浸かってしまった今現在。

仮に同じこと言ってる楽器未経験の入団希望者(高校のOB回の楽団なのでそんな人が現れる事は有り得ないが)がもし現れたら、こいつこそは狂人か大物かに違いないと恐れ戦くこと請け合いだ。自分の事は棚に上げて。

それ程までにオーボエもパーカッションも吹奏楽では独特の立ち位置である特異な楽器であるのだ。

振り返って考えると当時の自分は色合いの似たオーボエとクラリネットを混同していたものと思われる。

かくして、その時の打楽器のパートリーダーに自分は甚く気にいられた。

その為、楽器体験ツアーの後のアンケートでは打楽器は第4希望に書いてたにも関わらず、無事打楽器パートの新メンバーとして暖かく迎え入れられる運びとなった。

結論:打楽器は良いぞ。

そうして始まったアマチュア打楽器奏者としての人生は17年目を迎えた訳だ。

『撥打ち3年合わせ8年』という言葉(諺?格言?)を思えばそれなりに長い歳月が経過している。

これだけの年月を打楽器奏者として過ごして思うのは、確かにパーカッションは誰にでも音が出せる易しい楽器ではある。

しかし、誰にでも続けられる楽器では決して無い。

打楽器パートは、常に管楽器奏者とは違う行動を要求される。

それはコンクールの会場で全く別の動きをするということや、基礎合奏で特にやる事が無いといった分かりやすい違いから、曲の演奏中は全体の流れを見てその都度その都度で最適な音色を一つずつ選択していく必要が有るという管楽器とは異なる形で演奏を組み立てているという違いも含む。

自分の役割は、基本的に自分一人しか居ないというプレッシャーの中、その音がコンマ1秒でも曲とズレた時、その失敗は全ての観客に露呈してしまう。しかしどんなに見せ場で成功したとて、自身の演奏にスポットライトが当たることも拍手が貰えることも基本的には無い。

また、吹奏楽部という部活を運営していく中で、無自覚に省かれたり、管楽器奏者から理解を得られず遣る瀬無い思いをしたりといった場面は両手の数だけでは数え切れない。

そんな中、管楽器に転向したいと希望する人やそもそも他の部活を選択する人、卒業後は他の音楽ジャンルでドラマーとして活動する道を選ぶ人も多い。

それでも、パーカッションは吹奏楽の中で唯一無二のやり甲斐があるパートだと主張したくてやまない。

プレッシャーは大きい。

自分一人のミスで、演奏が崩壊してしまう事態も場合によっては有るし、反対に崩れ掛けの合奏が自分の出したたった一音で立ち直ることも有る。

演奏中は常に孤独でも、それ以外の場面では常にチームワークを要求される為、パート内の仲は極めて良好であると思う。

楽しい曲ではとことん巫山戯て。

真面目な曲では過集中を要求される故に常に険しい顔をしている。

私はやっぱりパーカッションが吹奏楽の中で一番カッコイイパートだと思う。

でも多分、大人になっても趣味で吹奏楽やってる人は皆、自分の担当楽器が1番カッコイイと思ってると思うけど。

私の所属する社会人楽団は毎年8月末に定期演奏会を開催する。その練習の為、夏の時期は電車を乗り継ぎ毎週の様に親の脛を齧りながら(娘を預ける必要が有るので)練習に参加している。

もし、私達の演奏を。

いや、何かしらで誰かしらの吹奏楽やオーケストラの演奏を聴く機会が、もしこの稿を読んでくれている貴方に訪れるなら。

誰にでも出来るけど、誰でもは出来ないパーカッションパートの事も是非注目して頂きたい。

打楽器なんて簡単。

そんなイメージを覆す、しかし目立たないスーパープレーが沢山見られること請け合いだ。

願わくば拍手をください。出来ればそんなパーカッションパートを愛してください。

それでもし「楽しそう!」だと思って貰えたら、是非一緒にパーカッションをやってみませんか?

趣味としての楽器を始めるのは何歳からでも遅くないのだから。

一読感謝!

(2026.8.10)

追記(2026.8.28)

なんと!

今年の定期演奏会の来場者アンケートにて、自分個人に対して『カッコイイ。』と感想を寄せてくださった方がなんと3名も居たそうだ。

パート単位でお褒め頂いたことは今までも何度かあったが、個人指名を頂けたのは初めてである。

ありがとうございます!

誰かの心に残るパフォーマンスをが出来ていたのなら、これ程に幸福なことは他に無い。

何処を見てカッコイイと思って頂けたのかな?

『天国の島』のスネアドラムだろうか。

『ラプンツェル』のティンパニか?

それとも『トゥーランドット』のシンバル?

マーチングショウのシンバルか?クォードか?

それとも『エルクンバンチェロ』のドラムかも。

やっぱり吹奏楽で一番カッコイイのはパーカッションだ!

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